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司法試験合格を目指すブログ

平成28年度司法試験の合格者が、自身の試験対策を公開するためのブログです。

自己紹介

名前:まこと

受験歴: 平成27年 予備試験合格(大学4年在学中)

中央ロー、早稲田ロー(半免→繰上げ全免)合格

平成28年 司法試験合格

 

ロースクール入試や、予備試験・司法試験の対策についての質問を受け付けています。

宜しくお願い致します。

 

平成28 司法試験 民事系第3問 再現答案

第1設問1 

1Xの構成員がYに対して総有権の確認を求めるには、原則としてその全員が原告とならなければならない理由は、総有権の確認の訴えが固有必要的共同訴訟に当たり、全員が原告となって初めて当事者適格が認められるからである。以下、詳述する。 

⑴固有必要的共同訴訟(40条1項参照)とは、複数の当事者が共同してはじめて当事者適格が認められる共同訴訟をいうと解されるところ、その趣旨は、当事者の全員に手続保障を与え、合一確定により紛争解決の実効性を図る点にある。 

 そこで、実体法上の管理処分権の帰属に加えて、訴訟法的観点も加味して、固有必要的共同訴訟に当たるか否かを判断すべきと解する。 

⑵本件不動産の管理処分権は、Xの構成員全員に総有的に帰属するから、全員に共同して行使される必要がある。 

 また、全員に総有的に帰属する以上、構成員全員に手続保障を与えて紛争を合一に確定する必要があるといえる。 

 したがって、総有権確認の訴えは固有必要的共同訴訟に当たるといえる。 

⑵そして、固有必要的共同訴訟においては、当事者全員が原告となって初めて当事者適格が認められるのが原則であるから、本件においても、原則として、Xの構成員全員が原告にならなければならない。 

2構成員の中に訴えの提起に反対する者がいた場合には、その者を被告に加えて訴えを提起することが考えられる。 

⑴前述の通り、固有必要的共同訴訟の趣旨は、当事者全員に対する手続保障と、合一確定による紛争解決の実効性にある。 

 そして、訴えの提起に反対する者を被告に加えることで、その者は訴訟に関与でき、手続保障を図ることができるし、構成員全員の関与の下で権利関係を合一に確定することにより、紛争を実効的に解決することが出来る。 

⑵したがって、一部の構成員を被告に加えたとしても上記の趣旨に反しないから、訴えの提起に反対する者を被告に加えることが認められると解する。 

3訴訟係属後に新たに構成員となる者が現れた場合、Xの構成員全員が訴訟の当事者となっていないこととなるから、Xの当事者適格が認められず、訴えが却下されるという訴訟上の問題点がある。 

 そこで、新たな構成員を訴訟に参加させることができないか。 

⑴まず、新たな構成員がBに同調する場合には、その者の積極的な訴訟への参加が期待できる。そこで、その者に本件の訴えに共同訴訟参加(52条1項)してもらうことが考えられる。 

ア「合一にのみ確定すべき場合」とは、必要的共同訴訟となる場合をいうと解されるところ、本件のように新たな当事者の参加により、当事者適格の瑕疵が治癒される場合も含むと解する。 

イしたがって、本件も「合一にのみ確定すべき場合」に当たるので、新たな構成員の共同訴訟参加が認められる。 

⑵ア一方で、新たな構成員がBに同調しない場合には、その者に対して訴訟告知(53条1項)し、共同訴訟参加を促すことが考えられる。もっとも、その者がBに同調しない以上、参加は期待できない。 

 イそこで、主観的追加的併合により、新たな構成員を被告に加えることができないか。 

(ア)この点、主観的追加的併合を認める明文の規定はない。 また、併合により、訴訟の遅延や審理の複雑化を招くおそれもある。 

 そこで、主観的追加的併合は認められないと解する。 

(イ)したがって、本件においても主観的追加的併合は認められず、Bとしては訴えを取り下げ、新たな構成員を被告に加えて再び訴えを提起するしかない。 

第2設問2 

1訴えの利益について 

⑴確認の訴えは、その対象が無限定となりうるし、確認判決に執行力がないために紛争解決の手段としては迂遠であるから、訴えの利益については厳密に判断すべきである。 

 そこで、①確認対象が適切であり、②即時確定の利益が認められ、③方法選択が適切といえる場合に限り、確認の利益が認められると解する。 

⑵ア上記の要件のうち、本件で問題となるのは①の要件であり、原則として、自己の現在の私法上の権利法律関係の積極的な確認でなければ、確認対象の適切性は認められないと解する。 

 イそして、判例は、訴訟代理人の代理権の存否は本案の前提としての手続的事項であるから、独自の訴えの利益は認められないとしている。 

 判例がかかる判断をした理由は、本案の前提としての手続的事項は、私法上の権利法律関係とはいえないからであると考えられる。 

 ウ以上を踏まえて本件についてみると、Zが会長の地位にあること及びZの解任決議の無効は、いずれもBのXの代表権を否定する事項であるところ、かかる事項は、Bの訴訟追行権を否定する手続的事項に過ぎないとも思える。 

 もっとも、BのXの代表権は、訴訟追行権を基礎づけるだけでなく、Xを代表して私法上の取引を行う権限を含んでいるから、単なる本案の前提たる手続的事項ではなく、私法上の権利法律関係であるということが出来る。 

 したがって、BのXの代表権を否定する、Zが会長の地位にあること及びZの解任決議の無効も、私法上の権利法律関係であるといえるから、その確認の訴えは、対象選択の適切性が認められ、確認の利益が認められる。 

2反訴の要件について 

⑴Zによる反訴が、「防御の方法と関連する請求」(146条1項)に当たらないか。 

ア「防御の方法と関連する請求」とは、本訴請求を理由なからしめる事実と内容や発生原因で共通である請求をいうと解する。 

イ本件では、前述の通り、Zが会長の地位にあること及び解任決議の無効の確認により、BのXの代表権が否定されることになるため、これによりBの訴訟追行権も認められず(37条、28条後段)、本訴は訴訟要件を欠き却下されるべきことになる。 

 そうだとすると、反訴たる確認の訴えは、本訴請求を却下させる事実と内容で共通であるといえ、「防御の方法と関連する請求」に当たる。 

⑵また、本件は、146条1項但書各号にも当たらない。 

⑶以上より、本件の反訴は、146条1項所定の要件を満たす。 

第3設問3 

1下線部①について 

判例は、権利能力なき社団が、当該社団の構成員の訴訟担当であるため、115条1項2号に基づいて判決の効力が構成員に及ぶとしていると考えられる。 

 ⑵もっとも、本件では、XのYに対する総有権確認請求の判決の既判力は、XY間で生じるに過ぎず、同様にXのZに対する請求の判決の既判力も、XZ間で生じるに過ぎないため、何ら請求のないYZ間においては既判力は生じない。 

 そこで、このような本件においても、XZ間の判決の既判力が、Xの構成員たるZに及ぶと解することができるか。 

 アこの点、既判力とは、判決主文に生じる後訴での通用性ないし拘束力をいうと解されるところ、その趣旨は、手続保障による自己責任に基づく紛争の蒸し返しの防止にある。 

 そこで、手続保障が及んでいる当事者については、既判力が及ぶと解して良いと解する。 

 イ本件では、XY間の訴訟とXZ間の訴訟は、いずれもXの総有権の確認の訴えであり、その訴訟物は同一であるから、YはXとの関係のみならず、Zとの関係においても、当該訴訟物について手続保障が尽くされているということができる 

 したがって、本件においても判例の援用を認めて良く、XY間の訴訟の判決の既判力がZに及ぶと解する。 

2下線部①について 

⑴既判力は主文判断に現れる訴訟物たる権利法律関係に生じる(114条1項)と解されるところ、その基準時は、口頭弁論終結時であると解する。なぜなら、当事者は口頭弁論終結時まで攻撃防御方法を尽くして争うことが出来るため、手続保障に基づく自己責任を問うことができ、趣旨が妥当するからである。 

 したがって、既判力が及ぶ後訴においては、前訴基準時の主文判断について、基準時前の事由によって争うことは許されないと解する。 

⑵本件では、第1訴訟において、XのZに対する総有権の確認の訴えが認容されているから、前訴の基準時においてXが本件不動産の総有権を有していたことにつき既判力が生じる。 

 そして第2訴訟において、YはZに対する債務不履行に基づく損害賠償を請求について、Zは、本件不動産の抵当権設定契約時に自身が同不動産の所有権を有していたことを主張して争っている。かかる主張は、前訴の基準時より以前の抵当権設定契約時の本件不動産の所有権の存否につき争っているに過ぎないから、前訴基準時の主文判断を争っているとはいえず、前訴の既判力に反しない。 

⑶したがって、YとZの主張の対立点について、前訴の既判力が作用するとはいえない。 

3下線部③について 

前述の通り、既判力が作用しないとしても、第2訴訟において改めてZが本件不動産の帰属を争うことは信義則(2条)に反しないか。 

⑴公平の観点からみて、前訴の主要な争点を不当に蒸し返すと認められる主張は、信義則に反し認められないと解する。 

⑵本件では、確かにYとしては、前訴においてZに対して訴訟告知をしておくことにより、第2訴訟で本件不動産の帰属を争われることを防ぐことができたといえる。 

 もっとも、このようなYの落ち度を考慮したとしても、ZはXとの間で本件不動産の総有権について攻撃防御方法を尽くすことが出来たのであり、Xの構成員たるYに対して第2訴訟で改めて本件不動産の帰属を争うことは、前訴の主要な争点を不当に蒸し返すものといえる。 

 したがって、Zの主張は信義則に反し認められず、裁判所は第2訴訟において、本件不動産の帰属について改めて審理・判断できない。 

                            以上

 

平成28年 司法試験 民事系第2問 再現答案

第1設問1⑴

1本件では、Aに対して臨時取締役会の招集通知が発せられていないところ、かかる点を理由に臨時取締役会決議が無効とならないか。

⑴368条1項より、取締役会の招集の際には、各取締役に対して通知が必要であるところ、本件では甲社の取締役たるAに招集通知が発せられていないため、同条項に反する。

⑵では、上記招集手続の違法が、取締役会決議の無効原因となるか。

アこの点、株主総会決議と異なり、特別の訴えの制度が設けられていないため、取締役会決議の手続に違法がある場合には、当該決議は無効となるのが原則であると解する。

 もっとも、招集通知を欠く場合については、当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認められる特段の事情がある場合には、当該取締役会決議は無効とならないと解する。

イ本件の臨時取締役会の決議は、Aを代表取締役から解職する旨の決議であるところ、かかる決議との関係でAは「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項)に当たらないか。

(ア)同条項の趣旨は、忠実義務(355条)に沿った公正な議決権行使が出来ない取締役を決議から除く点にあるから、「特別の利害関係を有する取締役」とは、忠実義務に沿った議決権行使が期待できない取締役をいうと解する。

(イ)Aは、自身を代表取締役から解職する旨の決議においては、身の保身から忠実義務に沿った議決権行使を期待できないため、「特別の利害関係を有する取締役」に当たる。

ウしたがって、Aは369条2項に基づき、臨時取締役会の議決に加わることができないから、仮に招集通知が発せられ、取締役会に出席できたとしても、決議の結果に影響はなく、特段の事情が認められる。

 よって、上記の招集手続の違法は無効原因に当たらない。

2では、臨時取締役会の招集通知に、取締役会の目的である事項について記載のなかったことを理由に、取締役会決議が無効とならないか。

⑴この点、取締役会は、状況に応じて業務執行の決定を行う必要がある(362条2項1号)から、招集通知に記載のない事項についても決議することが認められると解する。

⑵したがって、招集通知に取締役会の目的である事項の記載を欠いた点は、手続の違法に当たらない。

3以上より、臨時取締役会決議は有効である。

第2設問1⑵

1まず、取締役の報酬等の額について、株主総会の決議によって定められた報酬等の総額の最高限度額の範囲内で、取締役会の決議によって役職ごとに一定額が定められるという甲社の運用は、株主総会決議で報酬等の最高限度額を定めることによりお手盛り防止の趣旨に反しないため、取締役の報酬等につき株主総会決議を必要とする361条1項1号に反しない。

2では、Aの報酬の額を月額150万円から月額20万円とする旨の取締役会決議は有効か。Aの同意がないため問題となる。

⑴この点、取締役の報酬は、一度定められた場合には、取締役と会社間の委任契約(330条、民法643条)の内容となるため、取締役の同意なく減額することは認められないのが原則であると解する。

もっとも、報酬は職務の対価であり、役職の変更に伴って減額がなされることは合理的である。そこで、役職の変更により報酬が減額される旨の慣行が社内において存在していた場合には、取締役はこれを了知して従来の役職に就いていたと解されるから、かかる場合には役職の変更に伴う報酬の減額につき、取締役の黙示の同意が認められ、報酬の減額が認められると解する。

⑵本件では、取締役会の決議によって役職ごとに一定額が定められ、これに従った運用がなされていたのであるから、かかる運用につき取締役たるAの黙示の同意が認められる。

 したがって、かかる運用に従った月額50万円の限度で、報酬の減額についてのAの同意が認められるから、上記取締役会決議は、月額50万円の限度で有効である。

3以上より、Aは月額50万円の報酬を、委任契約に基づいて甲社に対して請求できる。

第3設問2⑴

Aは甲社に対して、339条2項に基づいて、損害賠償を請求することが考えられる。

1本件では、甲社の定時株主総会において、Aの取締役の解任に関する議案が可決されているから、Aは「前項の規定により解任された者」に当たる(339条1項、341条)。

2Aの解任について「正当な理由」がないと認められるか。

⑴339条2項の趣旨は、解任がやむを得ない場合に限り、取締役による損害賠償請求を認める点にあるから、「正当な理由」とは、当該取締役の能力・適性に照らして、解任がやむを得ないと認めるに足りる合理的理由が存する場合をいうと解する。

⑵本件では、Aは、事業の海外展開を行うために必要かつ十分な調査を行い、その調査結果に基づき、事業の海外展開を行うリスクも適切に評価して、取締役会において、事業の拡大のために海外展開を行う旨の議案を提出しており、取締役の職務に適する能力をいまだ有していたといえるから、解任がやむを得ないと認めるに足りる合理的理由は存在しない。したがって、「正当な理由」はないと認められる。

3以上より、要件を満たすので、Aの請求は認められる。

第4設問2⑵

1①について

Bは、854条1項に基づいて、「役員」たるAの解任の訴えを提起することが考えられる。

⑴Bは甲社の総株主の議決権の20%を有しているから、議決権の100分の3を有する株主に当たる(854条1項1号、854条2項)。

⑵Bは、甲社及びAを被告として訴えを提起しなければならない(855条)。

2②について

⑴「職務の執行に関し不正の行為」とは、善管注意義務(330条、民法644条)に反する行為をいうと解されるところ、Aは多額の会社資金を流用しており、会社に著しい不利益を生じさせているから、善管注意義務違反があるといえ、「職務の執行に関し不正の行為」が認められる。

⑵本件では、定時株主総会が定足数を満たさず、流会になっているところ、かかる場合でも「当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき」に当たるか。

ア同条の趣旨は、株主総会における取締役に対する責任追及が不十分に終わり、当該取締役が解任されなかった場合に、訴えにより取締役を解任される方法を株主に確保する点にある。

 そして、取締役を解任する旨の議案が否決された場合のみならず、株主総会が流会となった場合でも、取締役に対する責任追及が不十分に終わるおそれは存するといえ、前述の趣旨が妥当する。

 そこで、「否決されたとき」には、株主総会が流会になった場合も含まれると解する。

イしたがって、本件でも定時株主総会が流会になっているから、「否決されたとき」に当たる。

⑶以上より要件を満たすので、Bによる訴えは認められる。

第5設問3

1②について

Dは甲社に対して、423条1項に基づく損害賠償責任を負うことが考えられる。

⑴Dは甲社の取締役副社長なので、「役員等」に当たる。

⑵Dは「任務を怠った」といえるか。

ア「任務を怠った」とは善管注意義務違反ないし法令違反をいうと解されるところ、Dは取締役として、348条3項4号に基づいて、内部統制システム構築義務を負っている。

 そして、内部統制システム構築義務とは、①適切な内部統制システムを構築する義務と、②当該システムを適切に運用する義務をいうと解される。加えて、いかなるシステムが適切かは会社の規模や予算、その時代の他の会社との比較によって定まるから、①の義務については経営判断原則が適用され、判断の基礎となる情報の収集及び判断の過程に合理性がないと認められる場合に限り、義務違反が認められると解する。

イ(ア)甲社の取締役会は「内部統制システム構築の基本方針」を決定しており、甲社は、これに従い、法務・コンプライアンス部門を設けている。また、甲社は、内部通報制度を設けるなどして、法令遵守に向けた取組を実施している。さらに、下請業者との癒着を防止するため、同規模かつ同業種の上場会社と同等の社内規則を制定しており、これに従った体制が整備されている。そのため、甲社の内部統制システムは、その構築についての情報収集や判断過程が合理的であると認められるといえるから、法務・コンプライアンス部門を担当するDに、内部統制システム構築義務の違反は認められない。

 (イ)一方で、Dは、内部通報制度の担当者から、EとFが下請工事の代金を水増しした上で、代金の一部を着服しようとしているとの通報があった旨の報告を受けたにもかかわらず、これまで不正行為が生じたことがなかったことや、会計監査人からの不正行為をうかがわせる指摘が無かったこと、かつて直属の部下であったEに信頼を置いていたことから、通報に信ぴょう性がないと考え、法務・コンプライアンス部門に対して調査を指示せず、他の取締役や監査役にも知らせていない。

もっとも、これまで不正行為が生じていないからといって、通報された不正行為の存在が否定される理由にはならないし、会計監査人の指摘がないとしても、法務・コンプライアンス部門を担当しているB自身が調査を指示する必要があるといえる。また、いかに信頼の置ける人物であっても不正行為に及ぶ可能性はありうるから、Eに信頼を置いていたことも、不正行為を否定する根拠にはならない。

したがって、Dの判断は何ら正当な根拠のない判断であり、内部統制システムを適切に運用しているとはいえないため、運用義務に違反がある。

ウしたがって、Dは「任務を怠った」といえる。

⑶Dの上記責任が認められるためには、Dに故意または過失が認められる必要があると解されるところ(428条参照)、Dは、内部統制システムを適切に運用するよう注意する義務があったにもかかわらずこの義務に違反したといえるから、過失が認められる。

⑷EとFは5000万円を着服しているから、甲社には5000万円の「損害」が認められ、任務懈怠との因果関係も認められる。

⑸よって、Dは甲社に対して、423条1項に基づいて5000万円の損害賠償責任を負う。

2②について

Cも甲社に対して、423条1項に基づく損害賠償責任を負うことが考えられる。

⑴Cは代表取締役社長であるから、「役員等」に当たる。

⑵アCも取締役として内部統制システム構築義務を負うところ、前述の通り、甲社の内部統制システムの構築は、その情報収集や判断過程が合理的といえるから、Cに構築義務の違反は認められない。

 また、Cは内部通報制度の担当者から本件通報があった旨の報告を受けて、直ちに本件下請工事や本件通報について、法務・コンプライアンス部門に対して調査を指示しており、迅速かつ適切に内部統制システムを運用しているといえるから、運用義務も果たしているといえ、内部統制システム構築義務の違反は認められない。

イ一方で、Cは取締役会の招集権限を有するため(366条1項)、取締役会の非上程事項に関しても、他の取締役の業務の監視義務を負っている(362条2項2号)。そして、上述のDの内部統制システムの運用義務違反を監視して未然に防ぐことができなかった点は、監視義務の違反といえるから、Cは同条項に違反したといえ、「任務を怠った」といえる。

⑶もっとも、EF間において、不正が発覚することを防止するための偽装工作が行われていたのであり、仮にCが監視義務を尽くしていたとしても、そのような巧妙な偽装を発見することは不可能であったといえるから、Cの監視義務違反と「損害」との間には因果関係が認められない。

⑷したがって、Cの責任は認められない。           以上

平成28年度司法試験 成績

司法試験の成績が帰ってきました。

短答も合わせた点数は以下の通りです(少数点は切り下げ)。

 

短答:141点(1125位)

公法系:126点(憲法A行政B、451位)

民事系:221点(民法A商法A民訴A、67位)

刑事系:112点(刑法A刑訴D、1311位)

労働法:68点(49/1346位)

論文:527点(160位)

総合:1064点(175位)

※系統別の順位は、以下の法務省の資料から引用しています。

http://www.moj.go.jp/content/001202508.pdf

 

予想より遥かに良い順位で、成績表を見た瞬間に驚きました。

 

結果を分析してみると、まず、各設問で法律構成を外さなかった科目(民事系、刑法、労働)については、良い点数が付いているようです。

 

これまで伊藤塾の赤本を1周したのと答練以外は一切勉強していなかったため、憲法はまったく自信が無かったのですが、継続監視を13条後段で、禁止命令を22条1項で無難に処理し、枠組みを外さなかったことが評価されたのだと思います。

 

行政法や刑訴は、配点の大きい問題(行政法設問3、刑訴設問1)で、法律構成を大外ししてしまったので、点数が付かないのは予想通りでした。

 

今年の論文試験は、全体的に書くべき法律構成が分かり易い反面、設問の量が多いため、時間内にすべての設問を筋を外すことなく書き切れるか否かが勝負だったといえそうです。

私が合格点を取ることができたのは、全科目で途中答案なく7枚以上書くことができ、法律論としての緻密さはともかく、おおむね正解筋に触れることが出来たからだと思います。

 

今のところ、民法と刑法のみ再現答案を載せておりますが、他の科目の再現答案についても、完成次第載せますので、参考にして頂ければ幸いです。

 

 

勉強記録(大学4年11月〜司法試験)

予備試験の口述結果発表から、翌年の司法試験までの勉強記録は以下の通りです。

基本的には、予備試験までの勉強を継続しつつ、選択科目のインプットと、本試験の過去問演習を行うというスタンスです。

 

2015/11〜2016/05

・新司法試験の全年度全科目につき、答案作成

・旧試の事例問題3周

・事例研究行政法1周

・論証暗記

・加藤喬先生の労働法速習テキスト講義を受講(音声を3周聞き、論証をインプット)

TKC模試(A判定)

 

以上になります。

9月15日には、本試験の成績表が発送されるはずなので、成績を踏まえた分析など出来ればと考えています。

 

勉強記録(大学2年11月〜大学4年11月)

受験勉強を本格的に開始した2013年11月から、予備試験に最終合格した2015年11月までの勉強記録です。

なお、勉強開始時の学力としては、

・憲民刑(上3法)及び両訴…大学の講義を受講、用語の意味が理解でき、主要な論点は聞いたことがある状態

・商法、行政法…ほぼ手付かず

という状態でした。

 

2013/11〜2014/05(平成26年予備短答まで)

・両訴及び商法、行政法(下4法)につき択一六法を3周通読

・全科目につき、短答過去問を3周

・予備短答は、165点で不合格

 

2014/06〜2014/12

・憲民刑及び刑訴につき、内藤慎太郎先生の論文基礎力徹底ゼミの講義のみコースを受講、並行して各科目につき論証作成

・民訴、基礎から分かる民事訴訟法を通読、同書をベースに論証作成

会社法、リーガルクエスト会社法を通読、論証作成

・11月から、伊藤塾のコンプリート論文答練受講開始

民法、刑法、両訴、商法につき、旧司法試験の事例問題の答案構成2周

 

2015/01〜2015/03

行政法、サクハシを通読後、原田先生の事例研究行政法の講義を受講、

・コンプリート答練

・上記の旧試を3週

・論証読み込み

 

2015/04〜2015/05(平成27年予備短答まで)

・全科目につき、短答過去問5周

民法、両訴、商法、行政法につき条文素読

憲法百選読み込み

・予備短答は、190点台後半で合格

 

2015/06〜2015/07前半(平成27年予備論文まで)

・民事実務対策として、辰巳ハンドブック通読、大島本通読、論文の森3周

・刑事実務対策として、辰巳ハンドブック通読、論文の森3周

・旧試2周

・事例研究行政法2周

伊藤塾の論文直前答練、模試

・論証読み込み

・予備試験論文は、300位台前半で合格

 

2015/07後半〜2015/08

・私立ロー入試過去問の答案作成

・論証読み込み

 

2015/10(平成27予備論文発表〜口述)

・刑法前田250選読み込み

・上記実務科目対策の繰り返し

・論証読み込み

・予備試験口述は、120点で合格

 

以上になります。

 

 

 

平成28年度 司法試験 民事系第1問 再現答案

第1設問1⑴

Eは売買契約(555条)に基づいて、A及びDに対して、甲土地の所有権移転登記手続請求を行うことが考えられる。

そして、かかる請求が認められるためには、A及びDが甲土地の売買契約の売主たる地位を有している必要があるところ、本件では、A及びDがCの相続人であることから、Cに甲土地の売買契約が帰属していれば、同契約の売主たる地位は、A及びDに包括承継される(896条本文)。そこで、Cに甲土地の売買契約が帰属するかにつき、以下検討する。

1まず、本件では、AはCの親権者であり、Cの法定代理権を有する(824条本文)。そして、AはCの代理人として、Eに対して甲土地を450万円で売却する契約を締結しているから、かかる売買契約は有権代理(99条1項)として有効にCに帰属するとも思える。

2もっとも、Cは売却代金を自己の借金の返済に充てようと考えて甲土地を売却していることから、上記契約は「利益が相反する行為」(826条1項)に当たり、無効とならないか。

⑴この点、親権者は前述の通り包括的代理権を有しており、取引の安全を図る必要があるから、「利益が相反する行為」に当たるか否かは、外形的・客観的に判断すべきと解する。

⑵本件において、売却代金が借金の返済に充てられることは、Aの内心の問題に過ぎず、外形的・客観的にみて、AとCの利益が相反しているとはいえないから、上記契約は「利益が相反する行為」に当たらず、有効である。

3しかしながら、上記の目的で甲土地を売却することは、Cに不利益を生じさせ得ることから、上記契約は代理権の濫用としてCに帰属しないのではないか。

⑴まず、上記契約は代理権の濫用に当たるか。

ア親権者には前述の通り包括的代理権が与えられていることから、親権者にかかる権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り、代理権の濫用に当たらないと解する。

イ確かに、親権者たるAに借金があれば、Cを養っていくことも難しいため、Aの借金の返済を目的として甲土地を売却することは、包括的代理権を付与した法の趣旨に反しないとも思える。

 しかしながら、本件では、Cは既に自動車販売店に整備しとして雇用され、自分でアパートを借りて生活しているのであるから、Cは既にAに養われることなく、独力で生活できる状態にあるといえる。そうだとすると、C所有であった甲土地の売却代金が、もっぱらAの借金の返済に用いられることは、Cに対して著しい不利益を生じさせるだけであるから、上記契約は、法の趣旨に著しく反する特段の事情があるといえ、代理権の濫用に当たる。

⑵では、かかる契約はCに帰属するか。

アこの点、代理権の濫用は、経済的効果を自己に帰属させようという代理人の内心と、契約の効力を本人に帰属させようという表示との間に不一致があり、心裡留保と同視できるから、93条但書を類推適用し、契約の相手方が代理権の濫用につき悪意または有過失であれば、契約の効力は本人に帰属しないと解する。

イ本件では、売買契約の相手方たるEは、Aが遊興を原因として多額の借金を抱えており、乙土地の代金600万円をAの借金に充当するつもりであることを知っていたから、Aの代理権濫用の意図につき悪意であったといえる。

したがって、契約の効力はCに帰属しない。

4以上より、売買契約はCに帰属せず、売主たる地位はA及びDに対して承継されないため、Eの請求は認められないとも思える。

 もっとも、本件において、Aは代理権を濫用しているから、かかるAが代理権の濫用を主張して請求を拒絶することは、信義則(1条2項)に反しないか。

⑴代理権を自ら濫用した後に、代理権の濫用による本人に対する契約効果の不帰属を主張することは矛盾挙動であるから、代理人自ら代理権の濫用を主張することは、信義則に反し許されないと解する。

⑵したがって、本件では、Aが代理権の濫用を主張して請求を拒絶することは、信義則に反し許されない。

5ただし、Dが代理権の濫用を理由に請求を拒むことは許されるため、EによるAの甲土地の持分の限度における移転登記手続請求は認められるが、A及びDに対する甲土地の所有権移転登記手続請求は認められない。

第2設問2⑵

DはFに対して、乙土地の持分権に基づいて、丙建物の収去及び乙土地の明渡しを請求することが考えられる。

1かかる請求が認められるためには、①Dに乙土地の持分権が認められ、②Fが丙建物を所有することにより乙土地を無権限で占有していることが認められる必要がある。

⑴本件では、AがCの代理人として、乙土地を600万円で売却しているところ、前述の甲土地と同様に、かかる売却は代理権の濫用としてCに帰属しない。そうだとすると、乙土地はC所有のままであり、Cの死亡により、A及びDが甲土地を共同相続している(898条)から、Dに乙土地の持分権が認められる。

⑵また、Fは乙土地上に丙建物を建築しているから、丙建物を所有することにより、乙土地を占有しているといえる。また、前述の通り、乙土地の売買契約はCに帰属しないため、乙土地の所有権はCからEに移転していない。そうだとすると、EF間で締結された乙土地の売買契約は、他人物売買(561条)に過ぎず、Fは乙土地の所有権を取得しないから、その占有は無権限であるといえそうである。

2もっとも、94条2項に基づいて、Fが乙土地の所有権を取得することはできないか。

⑴AF間において虚偽表示はないから、同条を直接適用することはできない。

⑵アもっとも、同条項の趣旨は、本人の帰責性の下に作出された虚偽の外観を信頼した第三者を保護する点にあるから、①虚偽の外観が作出され②かかる外観につき本人に帰責性があり③第三者の信頼が認められれば、同条項の類推適用が認められると解する。

 イ本件では、乙土地についてCからEに所有権移転登記手続がなされているから、虚偽の外観が認められる(①)。もっとも、かかる登記の移転は、Aにより行われたものであり、DはAに対してCの遺産について尋ねるなどしているが、無視されてしまっているのであるから、Dに虚偽の外観の作出につき、帰責性は認められない(②不充足)。

⑶したがって、94条2項の類推適用は認められず、Dの請求は認められる。

第3設問2⑴

MはEH間の消費貸借契約(587条)に基づく貸金債権をHから譲り受けたとして、Eに対して500万円とそれに対する利息や遅延損害金の支払を請求することが考えられる。

1まず、EH間の消費貸借契約の有効性について検討するに、EはHに対して、賭博に使うつもりであることを打ち明けて、平成26年4月1日、Hから500万円を借り受けている。そして、賭博への使用という契約の目的は、賭博罪(刑法185条)にも当たりうるものであり、公序良俗(90条)に反するといえるから、かかる目的に基づくEH間の消費貸借契約は無効である。

2もっとも、平成26年8月1日、HはMに対して、貸金債権を売却しているところ、MはEに対して債権を譲り受けたことを対抗できるか。

⑴本件では、貸金債権の譲渡を承諾する旨の書面がEからHに返送され、Mに交付されているから、債務者の承諾があるといえ、Mは債務者対抗要件を備えたといえる(467条1項)。

⑵そして、上記の書面には、なんら異議をとどめる旨が記載されていないから、Eによる異議をとどめない承諾が認められるところ、かかる承諾によりEによる消費貸借契約の無効の主張が制限されるか。公序良俗違反を理由とする契約の無効が、「事由」(468条1項)に当たるかが問題となる。

アこの点、同条項の趣旨は、異議をとどめない承諾がなされた場合に、債権の譲受人の取引の安全を図る点にあるところ、債権の発生原因たる契約が公序良俗に反する場合にまで、譲受人の取引の安全を図る必要性はない。そこで、公序良俗違反を理由とする契約の無効は、「事由」に当たらないと解する。

イしたがって、Eの異議をとどめない承諾にかかわらず、Eは公序良俗違反を理由とする貸金債権の不発生をMに対して主張でき、Mは債権の取得をEに対抗できない。

3以上より、MはEに対して貸金債権を有しないから、請求は認められない。

第3設問2⑵

MはEに対して、不当利得返還請求(703条、704条)として、500万円とそれに対する利息や遅延損害金の支払を請求することが考えられる。

1Eは、Hから500万円の交付を受けており、500万円の「利益」を有している。

2Mは、Hから400万円で貸金債権を譲り受けているから、Mには400万円の「損失」が認められる。

3Eの上記の「利益」は、「法律上の原因」がないものといえるか。

⑴同条の趣旨は、当事者間の公平にあるから、公平の理念からみて、財産価値の移動を、その当事者間において正当なものとするだけの実質的相対的理由がないことをいうと解する。そして、債務者が対価関係なく利益を得たときには、財産価値の移動に実質的相対的理由はないといえると解する。

⑵本件では、EH間の消費貸借契約が前述の通り無効となるところ、EがHに対して500万円の返還義務を負っている場合には、Eは対価関係に基づいて500万円を有しているといえる。

 そして、Hが賭博の使用を目的としてEに500万円を交付したことは、不法原因給付(708条本文)に当たる。Hは賭博の使用を知っていたのであり、「不法な原因が受益者についてのみ存した」とはいえず、同条但書の適用はないから、同条本文により、EはHに対して、500万円の不当利得返還義務を負わない。

 したがって、Eは対価関係なしに500万円を有しているといえるから、Eの「利益」は「法律上の原因」のないものといえる。

4Eが賭博のためにHから500万円を借りたことを原因として、消費貸借契約が無効となり、Mは貸金債権を行使できずに400万円の損失を被っているから、400万円の限度で、「利益」と「損失」の因果関係が認められる。

5以上より要件を満たすので、Mの請求は400万円の限度で認められる。

第5設問2⑶

LはEに対して、459条に基づいて、584万円の支払を請求することが考えられる。

1EはLに同意を得て連帯保証人になってもらっているから、Lは「委託を受けた」保証人に当たる。

2もっとも、Lは「債務を消滅させるべき行為」をしたといえるか。

⑴本件では、EK間で500万円を借り受ける合意がなされているところ、消費貸借契約の成立には金銭授受が必要と解されるが、本件では合意から1年以上経過しても金銭授受がないから、消費貸借契約は無効である。

よって、そもそも消費貸借契約に基づく貸金債権は存在せず、「債務を消滅させた」に当たらないとも思える。

⑵もっとも、478条の趣旨は、債権の準占有者を真実の債権者と誤信して弁済した弁済者を保護する点にあるところ、かかる趣旨は、Kから消費貸借契約が成立したかのような態度で連帯保証債務の履行を請求された本件におけるLにも妥当する。

 よって、同条に基づいて、Lの弁済は有効であり、「債務を消滅させた」に当たる。

3以上より、Lの459条に基づく請求は認められる。    以上